お金によって奪われたものとは
「億男」川村元気
- 作者: 川村元気
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2018/03/09
- メディア: 文庫
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相変わらずさくっと読める川村先生の小説。
映画化とのことで、読んでみました。
川村先生の作品は文体が軽くて読みやすいし、なんてこともないストーリーの中に少し考えさせられるようなテーマが入っているので好きです。
借金のため、一日中働きづめの男が宝くじで3億円当ててしまう。
お金と幸せの答えを求めて大富豪となった親友のもとを15年ぶりに訪ねるが、親友は3億円とともに失踪してしまう……という話。
宝くじ当たった人の末路という本が売れているように、みんな宝くじが当たった人がどうなるのか気になるんですよね。
わたしも物語のオチが気になって読み始めましたが、オチはだいたい予想通り。
そして、この本で、お金と幸せの何らかの答えが出るわけでもないです。
お金持ちは幸せなのか?
お金持ちは不幸なのか?
チャップリンが言うように、人生に必要なものは、勇気と想像力とほんの少しのお金なのか?
登場人物のセリフを借りるなら、
人間すべてひとりひとりに解がある。
わたしが解を見つけたかどうかはともかく、この本を読んでわたしがはっとしたのは、主人公の別居している奥さんの言葉……
「あなたがお金によって奪われた大切なもの。それは【欲】よ」
「確かに欲は人間を狂わせる。でもそれと同時に私たちを生かしている」
(略)
「なぜなら人は、明日を生きるために【何かを欲する】生き物だから。おいしいものを食べたい、どこかに行きたい、何かが欲しい。そう願うことで、私たちは生きていける。(略)」
ここのセリフだけでは、伝わらないので、ぜひ小説を読んで欲しいのですが、
子どもが生まれてバタバタと仕事と子育てをする中で、わたしは欲というものが減っていくのを実感していました。
子どもがいるから遠くには出かけられない、子どもがいるからそんなことできない、子どもがいるから動きやすい服しか着れない……
昔は情報誌をくまなくチェックして新しいお店を探したり、
いつかここに行こうと情報をストックしていましたが、
いつのまにか【どうせ行けないし】と諦め、欲が少なくなってきていたことを少しやばいなーと思っていたのでした。
欲があるからこそお金も貯める、欲があるからこそ働こうと思える。
もちろん、子どもを産んで逆に欲が出て来たこともありますが、人間が生きる上で【欲】というのは、わたしが思っていた以上に大事なのではないかと思いました。
ちなみに、わたしが宝くじで3奥円の当たったら、配当の良さそうな株を買うかな……?
- 作者: 川村元気
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- 発売日: 2014/09/18
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- 作者: 鈴木信行
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